宙組公演「カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~」苦情とイチャモン

宝塚で全ピー回見るうちの1/3弱見終わったところで愚痴を供養する。

供養することで残りの公演は明るく見たい。

 

[ダメだと思うところ]

2幕のドクトル・ツヴァイシュタインの歌らへん。「私はナチスドイツでヒットラーの下で兵器開発をしていた。敗戦したので次はソ連に行き、結局今はルシッフルの下で働いている」という経歴を説明する歌だが、ヒットラースターリンをポップなイラストにした映像とともに、最後は敬礼・ウラー!・ルシッフル陛下!で締める。

ドクトルの経歴は本筋に関係なく、ナチスの科学者である必要もないのに、ただドクトル(とルシッフル)の異常さを面白おかしく表現するためだけに歴史上の大罪人をポップな負のアイコンとして便利に使うのはダメじゃない?ダメだと思うんだけど、ネットでその辺が指摘されてる雰囲気もない。不勉強なので誰かが同じこと言っていないと確信が持てない。でも不快なのは確か。「(ルシッフルが)ヒットラーより勇敢でスターリンより賢い」みたいな歌詞もあった気がする。ダメじゃない?

「私は優秀な科学者で数々の素晴らしい兵器を開発してきたが、不遇で各国を転々としていたところをルシッフルが拾ってくれた」くらいで充分じゃん。あと、熱唱するりっつには申し訳ないが役どころのわりに曲が長すぎる。

 

あとは、ルシッフルがロシア帝国を取り戻す!私が新しい皇帝に!ネオロマノフ!と野望を語るのも、2023年の新作公演でその内容やんなきゃだめ?今まさにロシアを取り戻す!と起こされてる侵略が頭をよぎる。ただ、冷戦期×KGBの裏切り者×コメディの悪役の要素を掛け合わせるとこうなるのかな。まぁ、ルシッフルさんはヤバい悪人だけど小物なので、古城で学生を洗脳してるだけだから・・・。

 

[イチャモン(傑作が欲しかった気持ちからくる粗さがし)]

大人の男ボンドが女子大生デルフィーヌに猛烈アプローチするのがキモい。宝塚を愛好しておいて何を言っているのかって感じだが、舞台が現代だとなんかキツい。真風さんがかっこよくダンディにボンドを演じ、じゅんぱながキラキラと志高いデルフィーヌを演じるほどキツい。デルフィーヌを25歳~30歳にして欲しかった。大学院生ミシェル先輩との破局は切なくてかわいい。ここが一番設定の共感度は高い。

 

ボンドとデルフィーヌの短くも濃い時間の大事なポイントであるはずの、序盤のデュエットソングがイルカ薀蓄ソングなのはやっぱりおかしい。二人の距離がぐっと近づくタイミングのはずなのに、楽曲がそれを表現していないのでちぐはぐだと思う。もっとストレートに、ボンドとデルフィーヌがお互いの考えとか生き方に対して良いな♡と思う気持ちを歌にして欲しかった。ってかイルカの知識で年下の女の子を落とそうとするボンドキモくない?ゆりかちんが立ってるだけでかっこいいからって甘えるな!

 

無駄が多い。①冒頭でM長官たちが説明したボンド祖父とロマノフの縁の話を、ボンドがセリフでデルフィーヌに説明するのが無駄。客は同じ話2回聞いてるんですけど・・・うまくまとめてよ。②牢獄でミシェルがデルフィーヌに色々言い訳する場面も、それまで客が見てきた芝居をセリフで説明してる感じで、無駄に思う。もっと情緒的なセリフがいい。③舞踏会にラスプーチンが乱入した話を助っ人3人組とSMERSHの2人が2回続けて話すのも客は飽きる。工夫してくれ。

 

意図不明のセリフが気になる。「(盗撮のレコーダーに対して)Made in Japan・・・日本製?」日本製だからなんなんだ!!「(ボンドの落とした銃を拾って)ワルサーPPK・・・(ニヤリ)」だからなんなの!?「キャベツ畑だ!」「双眼鏡があればもっときれいに見えるのに」キャベツなんなの!?ほかにもいろいろ。

 

ボンドの感情の流れが腑に落ちない。序盤「殺しのライセンス持っていても心の乱れ抑えるためシガレット深く吸い込む」終盤「国のため、平和な世界を守るために戦う・・・案外本気だ」に対して、中盤「この銃が守るのは自由な世界、だけど時には好きに使わせてもらうぜ好きな女を守るため」。この中盤の人格なに?中盤は軽いチャラ男を演じる姿、序盤と終盤が本当の心ってこと?これに関してはマジで私の物語読み取り力が低いだけの可能性があるのでこれからも考える。

 

デルフィーヌの感情の流れが分かりにくい。中盤に突如現れるセンチメンタルソロ曲が、どの場面を受けての迷いの曲なのか。学生運動の今後、膨大な財産相続、自分の将来への不安の歌なんだろうけど、場面が断絶しており唐突なのが気になる。これも私の読み取り力が低いだけか?

 

まとめ ショー付きか、せめてもっと長いフィナーレが欲しかったよ~